前回の①では、ビエンチャン到着から仏像公園、タレーブアデーン、そしてヴァンヴィエン到着までの話を書いた。バスを降りた瞬間に目の前に広がるカルスト地形の山々——あの「写真で何度も見てたのに、実物は全然次元が違う」という感覚は、まだ体に残っている。今回は、そのヴァンヴィエンで迎えた2日目の記録だ。この日のメインは、タムジャン洞窟の探検と、ナムソン川でのカヤック体験。旅のハイライトのひとつになった1日を、できるだけそのまま書いておきたいと思う。

① 朝、また山に迎えられる

ヴァンヴィエン2日目の朝は、6時前に自然に目が覚めた。カーテンの隙間から光が入ってきて、なんとなく外が気になって起き上がった。テラスに出ると、山がそこにいた。昨日と同じ山なのに、朝の光の中で見ると全然違う表情をしている。薄く靄がかかっていて、山頂の稜線がぼんやりと滲んでいた。川の音がする。虫の声もある。静かというより、「音がちゃんとある静けさ」とでも言うような、やわらかい朝だった。

ヴァンヴィエンのナムソン川とカルスト地形の山々、川にはボートが浮かんでいる
朝のナムソン川。川の向こうにカルストの山がそびえている

滞在していたのはナムソン川のすぐそばのリゾートだった。ガーデンにはラオス伝統の形をしたランタンが立っていて、木々が適度に茂っている。朝早くだと人がほとんどいなくて、庭をひとり占めしているような気分になれた。

ヴァンヴィエンのリゾート庭園、伝統的なランタンと木々
早朝のリゾートのガーデン。誰もいない時間がいい

チェックアウトをまだ気にしなくていい朝の時間というのが、旅の中で一番贅沢だと思う。ラオスコーヒーを頼んで、練乳を入れてもらって、川を見ながらゆっくり飲んだ。濃くて甘い。これがまた朝に合うんだ。それだけで、もう十分だった。

② タムジャン洞窟へ——階段を登るだけで息が上がった

朝食を終えてから、徒歩でタムジャン洞窟に向かった。川沿いの道を歩いて15分ほど。ヴァンヴィエンの中心部からアクセスしやすい場所にある。入口付近には土産物屋が並んでいて、チケット売り場がある。入場料は3万キープくらい。日本円で200円ちょっとだ。安い。洞窟の入口は山の中腹にある。石段を登っていくのだが、これが結構急で、途中で息が上がった。周りの木々の間から川が見えて、景色だけはいい。

ヴァンヴィエンのカルスト絶壁とナムソン川、ライフジャケットを着た人たちが乗るボート
カルストの絶壁と川。ライフジャケット姿の旅行者が乗るボートが見えた

洞窟の外から見ると、山全体の迫力がよく分かった。垂直に切り立った断崖の中腹に、人が入れるくらいの穴が空いている。ここに入っていいのかという感じと、早く中を見たいという気持ちが同時にあった。

③ 洞窟の中——青と緑の光の世界

中に入ると、空気がひんやりと変わった。外の蒸し暑さが一瞬で消えて、体がすっとする。目が暗さに慣れてくると、内部がだんだんと見えてくる。洞窟の中はライトアップされていた。青と緑の光が、天井から下がる鍾乳石を照らしている。写真で見るよりずっと立体的で、静かな世界だ。

タムジャン洞窟内部、青い照明に照らされた鍾乳石と石灰岩の壁
洞窟の中は青い光に包まれていた。静かで、ひんやりしている

歩いていくと、だんだん天井が高くなってくる。大きな空間に出たとき、自分がすごく小さく感じた。何百万年もかけて形成されたものが、目の前にある。そういうスケールの話になると、言葉が追いつかなくなる。写真を何枚か撮ったけど、あの空間の感じはなかなか写真では伝わらない。体で感じるものだと思う。

木製の遊歩道が整備されていて、歩きやすい。急な箇所には手すりもついている。整備されすぎていないのが、ラオスらしくていい。最低限の安全は確保されているけど、探検している感覚は残っている。観光地化されすぎた洞窟とは違う、ちょうどいい塩梅だ。

タムジャン洞窟の奥、緑と青の照明と木製遊歩道、鍾乳石が垂れ下がる
洞窟の奥に進むと、さらに幻想的な空間が広がっていた

奥まで行って、また戻ってくる。出口に近づくにつれて、外の光がだんだん見えてくる。その逆光の中を歩く感覚が、なんか特別だった。「戻ってきた」という感覚が、普通の観光施設の出口とは違う重さをもっている気がした。

④ ナムソン川でカヤック

洞窟を出て少し休んでから、カヤックのレンタルショップへ。川沿いにいくつか並んでいて、どこも似たような値段だった。2人乗りのカヤックを借りて、川に漕ぎ出した。川に出ると、目の前にカルストの山が広がる。

ヴァンヴィエンのナムソン川沿いにカラフルなカヤックが並ぶ
カラフルなカヤックが並ぶナムソン川。これに乗って山の中を漕いでいく

川幅は思ったより広く、流れは穏やかだ。ラフティングのような激しさはなく、漕ぎながら景色を楽しむような感じ。橋の下をくぐるとき、ちょっとだけ冒険している気分になった。水は少し濁り気味だったけど、それがまたラオスの川らしかった。川の途中で岸辺に上陸して、しばらく休んだ。水際に足を入れたら思ったより冷たくて気持ちよかった。

山の麓に木々がびっしり茂っていて、空気がいい。川べりに立っていると、自分が自然の中にすっぽり入り込んだような感覚がある。日常の時間軸とは全然違うところにいる気がした。これが旅の醍醐味だな、と思う瞬間がある。この日は何度もそういう瞬間があった。

⑤ リバーサイドカフェでひと息

カヤックを返して、川沿いのカフェで昼ごはんを食べた。ヴァンヴィエンにはリバーサイドのカフェやバーが並んでいて、どこも山を眺めながら食事ができる。

ヴァンヴィエンのナムソン川沿いのリバーサイドカフェとカルスト地形の山々
川沿いのカフェから眺める山。ここでの昼食は格別だった

ラオスラーメン(カオソーイ)を頼んだ。スープが意外にもさっぱりしていて、魚系の出汁が効いていた。値段も安くて、これは何度でも食べたい味だ。川をぼんやり眺めながら食べていると、時間の感覚がなくなってくる。特別なことをしているわけじゃない。ご飯を食べているだけ。でも、景色が違うだけでこんなに気持ちが違う。「今ここにいる」という感覚の密度みたいなものが、日本でランチを食べているときと全然違うと感じる。

⑥ 熱気球が膨らんでいく夕方

午後、川沿いを散歩していたら、向こう岸の広い空き地に何かが見えた。近づいてみると、熱気球の準備をしていた。大きな布がゆっくりと空気で膨らんでいく様子を、しばらく眺めていた。

ヴァンヴィエン郊外の川岸でカラフルな熱気球が地面に展開されている
翌朝のフライトに向けて、熱気球の準備が始まっていた

カラフルな気球が地面いっぱいに広がっている姿は、力強くて見ていて飽きなかった。ここで悩んだ。乗るかどうか。費用もあるし、朝早いし——でも、あのカルストの山々を空の上から見たらどんな景色なのかと考えたら、もう悩む意味がなかった。その場で予約した。

夕日が山の稜線に沈んでいくのを、川べりで見た。

ラオスのバイク移動中に見えた夕日と観光地の風景
夕日が沈むラオスの空。オレンジが赤になって、山のシルエットだけが残る

オレンジが赤になって、山のシルエットだけが空に残る時間。ヴァンヴィエンの夕暮れは静かで、でもどこか豊かな色がある。一日中動いていたのに、この時間になると急にのんびりした気持ちになれる。こういう時間がたまらなく好きだ。

⑦ 夜のプールサイドに溶ける

宿に戻ると、プールがライトアップされていた。ランタンが吊るされていて、水面にその光が揺れている。誰もいないプールサイドに腰を下ろして、その光の揺らぎをしばらく眺めていた。

ヴァンヴィエンリゾートの夜のインフィニティプール、吊りランタンが水面に映っている
夜のプールサイド。ランタンの光が水面に揺れていた

昼間のカヤックの疲れが、じわじわと心地よい疲労感に変わっていくのを感じながら、今日一日を振り返っていた。洞窟の中のひんやりした空気。川を漕ぎながら見上げた山の迫力。熱気球がゆっくり膨らんでいく様子。夕日の色。それぞれが、全部「本物」だった。スクリーンの向こうじゃなく、実際に体で感じたものだ。旅に来るたびに思うことだけど、やっぱり「行ってみないと分からないこと」はたくさんある。

旅って、こういう偶然の積み重ねでできているんだと思う。計画していなかったことが、一番記憶に残ったりする。この日の洞窟探検も、カヤックも、熱気球の予約も——全部その場の流れで決まったことだ。それでいい。むしろそれがいい。

次は熱気球フライトの朝。あの山々を空の上から見るということが、もう楽しみで仕方なかった。早めに眠れそうだった。


次回のラオス旅行日記③では、ヴァンヴィエンの熱気球フライトと、ルアンパバーンへの移動をお届けします。カルスト地形を空から見た感動と、ラオスの鉄道体験——お楽しみに!

ABOUT ME
けーちゃん
年代:40代/性別:男性/職業:会社員 怠惰な生活を送りながら、自分のカラダを改善する。 残りの人生を楽しめるよう、日々の記録をしてみる。