■異国の空港に降り立った瞬間

飛行機がゆっくりと滑走路へ降り立ったとき、窓の外には見慣れない空港の景色が広がっていた。ベトナム経由のトランジット空港。ここは目的地ではないが、旅の流れを大きく左右する重要な場所だった。

機体の外では整備車両が忙しく動き、巨大な航空機が静かに並んでいる。日本の空港とはどこか違う色合い、違う空気。湿度を含んだ南国の空気が、到着したばかりの旅行者を包み込む。

まだラオスには着いていない。それでも、完全に日本の外へ出たことを実感する瞬間だった。

機内から見えた雲の切れ間に広がる夕焼けは、旅の期待を高めるには十分すぎるほど美しかった。しかし、この後に待っている移動の難しさを、この時はまだ知らない。

■「簡単なはず」が崩れていく時間

トランジットは経験上、ただ乗り換えるだけの作業だと思っていた。

しかし実際は違った。

降機後、案内表示を探して歩き始めるが、表示は英語と現地語のみ。方向が合っているのか分からないまま、人の流れについて進む。広いターミナルは想像以上に長く、歩いても歩いても目的のゲートが見えてこない。

途中で現れた巨大なデジタルウォールにはカンボジア国旗が映し出され、ここがアジアの国際ハブであることを改めて感じさせる。しかし、観光気分で眺めている余裕はなかった。

次の搭乗時間が頭をよぎる。

免税店エリアに入ると、広くて美しい空間が広がっていた。天井は高く、照明は柔らかく、床は鏡のように光っている。I Love Cambodiaと書かれたショップが並び、旅行者向けの土産物が整然と配置されている。

本来なら楽しいはずの空間。

しかしこの時の心境は少し違った。

「本当にここで合っているのか」

その不安が徐々に大きくなる。

■余裕のない乗り継ぎ時間

本来ならトランジット中に軽く食事を楽しむ予定だった。しかし現実は、ゲート探しと時間確認の繰り返しだった。

広い空港は美しいが、その分移動距離も長い。案内表示が突然消えたり、ゲート番号が変更されていたりと、小さな混乱が積み重なっていく。

座る余裕もなく歩き続け、ようやく見つけた搭乗エリア。

周囲には同じように疲れた表情の旅行者たちが座っていた。ここで初めて、少しだけ安心する。

窓の外には次に乗る飛行機。
ライトに照らされた機体が静かに待機している。

その姿を見た瞬間、張り詰めていた緊張が少しほどけた。

夫婦で顔を見合わせ、小さく笑う。

順調ではなかった。
思ったより大変だった。
でも、それも旅だった。

■トランジットが教えてくれたこと

海外旅行は、計画通りに進むとは限らない。

言葉の壁。
表示の違い。
空港構造の複雑さ。
時間への焦り。

すべてが重なると、普段なら簡単なことも難しく感じる。

それでも、不思議なことに後から振り返ると、この時間が強く記憶に残る。

完璧な旅より、少しだけうまくいかない旅のほうが印象深い。

搭乗案内が始まり、列がゆっくり動き出す。

次に降り立つ場所は、いよいよラオス。

長かった移動の先に、本当の旅が待っている。

―― 第3話へ続く ――

ABOUT ME
けーちゃん
年代:40代/性別:男性/職業:会社員 怠惰な生活を送りながら、自分のカラダを改善する。 残りの人生を楽しめるよう、日々の記録をしてみる。